今ある建物をなくしてしまうと、そこにはもう新築することができない「再建築不可物件」。建替えができないということは、建物の老朽化が進んでしまった場合、リフォームやリノベーションをすることによって維持していくことになります。
一般的には「再建築不可物件はリフォームが可能」といわれていますが、どんなリフォームでもできるというわけではありません。どんな工事なら可能なのか、どのような範囲であればリノベーションを施せるのか、確認しておきましょう。
再建築不可物件とはどんなものか
再建築不可物件とは、「接道義務を果たしていないため、今ある建物を一度取り壊してしまうと新しい建物を造れなくなる」という物件を指します。
接道義務とは、建築基準法上での「道路」に接していなければならないということ。安全で安心な街づくりの観点から生まれた決まりであり、この要件を満たしていないと建物の建替えや増築などができない「再建築不可物件」とみなされてしまうのです。
具体的には、
・建物のある土地が、建築基準法で定められる「道路」と全く接していない
・建物のある土地が、建築基準法で定められる「道路」と接してはいるが、接する部分の幅が2m未満
・建物のある土地が、幅員4m未満の道路や私道とのみ接している
このようなものが接道義務を果たしていない=再建築不可物件ということになります。
再建築不可物件のリフォーム事情
再建築不可物件の最大の弱点は、「建直しができない」こと。つまり既存の建物を一度取り壊してしまうと、もう新しい建物を造れなくなるので、そこに住むことができなくなってしまいます。
そのため、今ある建物をいかにしてリフォームやリノベーションで生まれ変わらせ、長く維持できるかが重要となります。再建築不可物件は、建直しは不可能でもリフォームやリノベーションは可能なのです。
ただし、いくら可能といっても限度があります。できる範囲をあらかじめ確認しておくことが重要です。
また、老朽化が進んでいる再建築不可物件のリフォームは高額になることが多いため、場合によっては新築物件を購入するほうが安価であるという事態も起こりえます。どのくらいの費用が必要になるのかということもしっかりおさえておきましょう。
再建築不可物件はどこまでリフォーム可能なのか
上述した通り、再建築不可物件はどんなリフォームでもできるというわけではありません。
可能なのは「建築確認が不要なリフォーム」です。
建築確認とは、「新築などの工事をする際にその内容が建築基準法に違反していないかどうかを確認」することです。これを申請しなくてもいいリフォームが、再建築不可物件でも行えるリフォームということになるのです。
これに照らし合わせ、具体的にどんな工事であれば不可能・可能なのかを見ていきましょう。
再建築不可物件でできないリフォーム工事
建築基準法で分類される「増築」「改築」「移転」「大規模な修繕」「大規模な模様替え」は、建築確認が必要な工事であるため、再建築不可物件では行うことができません。
・増築…いわゆる「建て増し」です。建物面積を増やしたり、敷地内に新たに建物を造ったりすることをいいます
・改築…建物の一部や全部をなくした・なくなった場合に、その部分と同様の用途を果たす構造・規模の建物を造ることをいいます
・移転…同じ敷地のなかで建物を引越しさせることをいいます
・大規模な修繕…主要構造物(柱・梁など)に対して、その2分の1以上を修繕することをいいます
・大規模な模様替え…主要構造物(柱・梁など)に対して、その2分の1以上の模様替え(建築物の構造・規模・機能を変えないで改造)することをいいます。
他にも、屋根の高さを変える(平屋を2階建てにする、2階建てを3階建てにする)工事もあてはまります。
これらの工事は建築確認が必要となるため、再建築不可物件では不可能となります。
再建築不可物件でできるリフォーム工事
再建築不可物件でできる工事は、できない工事以外のほぼすべての工事、と言い換えられます。
たとえば、柱と梁は2分の1以上残しておけばいいので、これらを残したスケルトンリノベーションまでも可能ということです。また2分の1以上残しておくことが要件であるならば、逆にいえば残りの2分の1は新しいものに取り換える工事もできるのです(柱が20本あるのなら、10本を新品に替えるなど)。
ちなみに、増築は不可能と上述しましたが、「防火地域・準防火地域に指定されていないエリアにある再建築物件であれば10㎡以下までの増築は可能」となります(東京都内は防火地域または準防火地域に指定されているため、不可能)。
木造住宅であればフルリフォームが可能
建築基準法第6条第1項第4号で定められた、いわゆる「4号建築物」というものがあります。
「2階建て以下・延べ面積500㎡以下の木造住宅」「1階建て・延べ面積200㎡以下の鉄骨造の住宅」がこの4号住宅にあたるのですが、特例としてこれらは大規模な修繕・模様替えにおいて、建築確認が省略されるのです。
そして、再建築不可物件となっている戸建住宅は、たいていこの4号住宅に該当するため、ほとんどの再建築不可物件の戸建住宅はフルリフォームが可能となります。
一方、マンションの場合は柱や梁を替えるようなリフォームはほとんどないと考えられるため、フルリフォームであっても建築確認が不要な工事の範囲内で収められるでしょう。
再建築不可物件をリフォームする際の費用
再建築不可物件は建替えができないので、「傷んでいるところを部分的に直しておいて、いずれは建て直そう」ということが不可能です。そのため、どうしても大掛かりなリフォーム費用がかかる傾向にあります。
また、老朽化が進んでいるものがほとんどであり、シロアリや水漏れによる建物本体の弱体化や、耐震基準を満たしていないことで、安全性に問題があるということも考えられます。
大規模なスケルトンリフォームで構造自体からしっかりと見直す必要があるため、費用が高額になるのですね。
そのため、あくまで例ですが、平屋住宅で1,000万円以上、2階建て木造住宅で1,500~2,000万円程度かかる想定で考えておかなければなりません。
また、再建築不可物件のある地域は狭小な敷地や幅の狭い道路ばかりである可能性が高いため、工事も容易ではありません。作業や足場設営のための場所確保、道路の自動車や宝光社の安全通行確保などのさまざまな問題をクリアするには、そこにも大きな費用がかかることを覚悟しなければならないでしょう。
せっかく安価で購入できたとしても、リフォーム費用で新築物件購入よりも高くつくようでは考えものです。まずはそもそもリフォームが可能なのか、どこまでできるのか、そしてその費用はどのくらいになるのか、あらかじめ確認を進めたうえで慎重に検討しましょう。
まとめ
建替えができない再建築不可物件を住宅として長く維持するには、リフォームが不可欠です。ただし物件の性質上リフォーム工事は大規模になること、費用も高額になりがちなこと、そもそも工事自体ができない可能性があることなど、注意点も多くあります。
再建築不可物件を購入する際には、その後のリフォーム工事の内容もしっかり考慮したうえで、総合的に検討することが重要です。
「リフォームするのではなく、再建築を可能にして売却したい」「更地にして活用する方法はないか」など、再建築不可物件についてさらに知識を深めたい方は、こちらの関連記事もぜひご覧ください。
(残り4記事のリンクを貼る)